こんにちは。面接官として20年間、5,000人の採用に携わり、現在は学生の就活支援と企業の採用支援をおこなっている、就活コーチのかとうけいこです。
「地元に戻って働いてほしい。でも、学生は都市部の企業を選んでしまう」
地方企業の採用担当者から、このような悩みを聞くことがあります。
一方、学生と話していると、必ずしも「地元では働きたくない」と考えているわけではありません。
「地元は好き。でも、どんな会社があるのかよく分からない」
「戻ったあとのキャリアが想像できない」
「都会の会社を選んだほうが後悔しない気がする」
こうした迷いの先に、都市部への就職があります。
私は日々の学生との面談に加え、TikTokでも就活について発信し、学生が何に迷い、企業のどこを見ているのかに触れてきました。
そこで感じるのは、Uターン就職が選ばれない理由を「地方だから」で片づけてしまうと、学生の本音を見落としてしまうということです。
学生が知りたいことと、企業が伝えていること。その間に小さなズレがあるケースは少なくありません。
この記事では、学生がUターン就職をためらう背景を学生側の視点からひも解きながら、地方企業が採用活動で何を変えればよいのかを考えていきます。
この記事で分かること
- Uターン就職が選ばれない背景には、給与だけでなく「将来をイメージできない」という不安がある
- 学生は地方企業を避けているのではなく、判断するための情報を十分に持っていないことがある
- 企業の魅力を増やすより、学生が知りたい形にして伝えることが採用改善の第一歩になる
株式会社まちづくり観光デザインセンターでは、正解を押しつけるのではなく、それぞれの会社らしさと学生の本音をつなぐ採用支援を大切にしています。
なぜ学生はUターン就職を選ばない?理由と原因を整理

Uターン就職に興味があっても、最終的に都市部の企業を選ぶ学生は少なくありません。
ただ、学生と話していると、「地方だから嫌」「地元には戻りたくない」とはっきり決めている学生ばかりではないと感じます。
むしろ、
「地元に戻るのもいいけれど、どんな会社があるのか分からない」
「東京で就職したほうが、将来の選択肢が広そう」
「一度地元に戻ったら、あとから動きにくくなりそう」
といった迷いを抱えたまま、就活を進めている学生もいます。
企業側から見ると「地元より都会を選んだ」と映ります。しかし学生側では、地方企業を選ばなかったというより、安心して選べるだけの判断材料がなかったというケースもあるのです。
まずは、学生がどこで迷い、何に不安を感じているのかを見ていきましょう。
給与や待遇の不安
Uターン就職を考える学生から出てきやすいのが、給与や待遇への不安です。
「地方は給料が低そう」
「同じ仕事なら、東京の会社のほうが条件がよさそう」
こうしたイメージから、求人票に書かれた初任給だけを比較してしまうことがあります。
一方で、家賃をはじめとした生活コストまで含めて比較している学生ばかりではありません。給与の数字は見えていても、その地域で実際にどのような暮らしができるのかまでは見えていないのです。
採用する側は「都会より生活費がかからないから」と分かっていても、学生が同じ前提を持っているとは限りません。
だからこそ、給与額だけではなく、住宅手当などの制度や暮らしにかかる費用も含めて、入社後の生活を具体的に伝える必要があります。
キャリアの不透明さ
学生との面談で感じるのは、就職先を「最初に入る会社」だけで考えていない学生が多いことです。
「ここに入ったら、どんな経験ができるのか」
「数年後にどんな仕事を任されるのか」
「この先も成長していけるのか」
こうした将来まで含めて企業を見ています。
そのため、仕事内容は書かれていても、入社後の成長やキャリアが見えなければ、「ここで働きたい」という決断にはつながりにくくなります。
とくに地方企業の場合、企業側には長く活躍している社員や若手に仕事を任せる文化があっても、採用ページでは十分に伝えられていないことがあります。
学生が不安なのは、地方で働くことそのものより、「ここで働いた先の自分が見えないこと」なのかもしれません。
応募先情報が少ない(認知不足)
企業の魅力を考える前に、もう一つ確認してほしいことがあります。
そもそも学生は、自社のことを知っているでしょうか。
学生は就活サイトやSNS、企業のWebサイトなど、さまざまな場所から情報を集めています。その中では、発信量の多い都市部の企業がどうしても目に入りやすくなります。
地方企業に魅力がないのではありません。学生からすると、「知らない」「見つけられない」「名前は知っていても何をしている会社か分からない」という状態になっていることがあります。
TikTokで学生の反応を見ていても、知らなかった仕事や企業について「こんな会社もあるんだ」と初めて気づく場面があります。
選択肢に入ってから比較されるのではなく、選択肢に入る前に就活が進んでしまう。これは地方企業が見落としやすいポイントです。
企業文化が見えにくい
給与や仕事内容と同じくらい、学生が気にしているのが「どんな人と働くのか」です。
企業サイトに事業内容や制度が詳しく書かれていても、社員の顔や普段の様子がほとんど見えないことがあります。
すると学生は、
「職場は堅い雰囲気なのかな」
「若手でも意見を言えるのかな」
「昔ながらの会社だったらどうしよう」
と、分からない部分を自分なりに想像します。
面接官として採用に携わってきた経験からも、企業が「普通だと思っていること」と、学生が「知りたいこと」にはズレがあると感じます。
たとえば、若手社員と社長が気軽に話していることや、有給休暇を取りやすい雰囲気は、社内では当たり前かもしれません。しかし学生にとっては、企業を選ぶうえで大切な情報です。
実際には働きやすい会社でも、見えなければ学生には伝わりません。
Uターン就職を選んでもらうには、条件を整えるだけでなく、学生が抱えている「分からない」を一つずつ減らしていくことが重要です。
「Iターン」との違いは?県外学生にも響く魅力づくり
Uターン就職は、進学などで地元を離れた人が、地元に戻って就職することを指します。一方、Iターン就職は、出身地とは異なる地域へ移り住んで働くことです。
地方企業が採用を考えるとき、まず「地元出身の学生に戻ってきてもらおう」と考えるのは自然です。
ただ、学生と接していると、地元かどうかだけで勤務地を決めているわけではないと感じます。
「その地域でどんな暮らしができるのか」
「自分に合う仕事があるのか」
「そこで働くことに納得できるか」
こうした条件がそろえば、出身地ではない地域も就職先の候補になります。
つまり、Uターン採用を考えることは、県外学生への採用を考えることにもつながります。
「地元だから戻ってきてほしい」だけではなく、この地域、この会社だから選びたいと思える理由をつくることが大切です。
「後悔したくない」学生の心理と情報量の関係

学生との面談で感じるのは、就活で「正解を選びたい」というより、「選んだあとに後悔したくない」という気持ちが強いことです。
Uターン就職では、会社だけでなく生活環境も変わります。そのため、学生にとっては「就職先を決める」と「暮らす場所を決める」がセットになります。
「戻ってみて合わなかったらどうしよう」
「都会に残った友人を見て後悔しないかな」
「この会社で働き続けられるかな」
企業側が想像している以上に、学生はさまざまな可能性を考えています。
だからこそ、「自然が豊か」「地元に貢献できる」といった魅力だけを伝えても、決断にはつながらないことがあります。
学生が欲しいのは、Uターン就職をすすめる言葉より、自分で納得して選ぶための判断材料です。
たとえば、インターンやOB・OG訪問、先輩社員との交流などを通して、仕事内容や職場の雰囲気を実際に知る機会を増やす方法があります。
良いところだけを伝える必要もありません。
実際の働き方や暮らし、仕事の大変さまで見えるほうが、「それでもここで働きたい」と学生自身が判断できます。
私自身、学生の相談に乗っていても、情報が増えたことで迷いがなくなる場面を何度も見てきました。
企業が学生の代わりに答えを出すのではなく、学生が自分で答えを出せるだけの情報を渡す。
この視点は、Uターン・Iターンを問わず、地方企業が学生から選ばれるために大切だと考えています。
地元企業が今すぐ取り組みたいUターン就職の改善ポイント

Uターン就職が選ばれにくい理由を見ていくと、給与や立地など、すぐには変えられない条件もあります。
しかし、学生と接していて感じるのは、条件そのものより、「その条件を学生がどう受け取っているか」に改善の余地があるということです。
採用担当者からすると十分に伝えているつもりでも、学生が知りたい情報とはズレていることがあります。
すべてを一度に変える必要はありません。まずは、自社の魅力が学生からどう見えているのかを確認するところから始めてみましょう。
魅力の見える化
企業の方とお話ししていると、
「うちには特別な強みがない」
「学生にアピールできるものが思いつかない」
という声を聞くことがあります。
しかし、学生側から企業を見ていると、魅力がないのではなく、社内では当たり前すぎて魅力として認識されていないケースが少なくありません。
たとえば、若手のうちからお客様を任されること。経営層との距離が近いこと。地域に自分の仕事の成果が残ること。
企業にとっての日常が、学生にとっては会社を選ぶ理由になることがあります。
「アットホームな会社です」「若手が活躍しています」と伝えるだけでは、その魅力はなかなか見えてきません。
「入社2年目でどこまで仕事を任されているのか」など、学生が働く自分を想像できるところまで具体化することが大切です。
魅力の見える化は、新しい制度や福利厚生を増やすことではありません。まず、自社にすでにあるものを学生の目線で見直すことから始められます。
情報発信の改善(SNS・Webサイト)
TikTokで学生と日常的に接していて感じるのは、学生が企業から発信される情報をよく見ていることです。
気になった企業があれば、採用ページだけでなくSNSまで確認する学生もいます。
そのとき、数年前からWebサイトが更新されていなかったり、採用情報しか掲載されていなかったりすると、仕事内容だけでなく「どんな人が働いている会社なのか」が分かりません。
一方、SNSだからといって、流行している動画を無理に作る必要もありません。
たとえば、
- 若手社員がどのような一日を過ごしているか
- 社内ではどのような人たちが働いているか
- 入社前と入社後で印象がどう変わったか
- 地元で働く社員が休日をどう過ごしているか
こうした日常的な情報も、学生にとっては大切な判断材料です。
採用担当者が「こんなことを発信して意味があるのだろうか」と思う内容に、学生が反応することもあります。
企業が伝えたい情報だけでなく、学生が知りたい情報を発信する。この視点を持つだけでも、WebサイトやSNSの内容は変わってくるはずです。
柔軟な働き方導入
学生と話していると、働き方についての質問も珍しくありません。
リモートワークや時差出勤、副業など、制度の有無だけを確認しているように見えるかもしれません。
しかし、その背景には「自分らしい生活を続けられるか」「環境が変わっても働き続けられるか」という不安があります。
特にUターン就職では、仕事だけでなく暮らしそのものが変わります。だからこそ、学生は「入社できるか」だけではなく、「この先もここで働けそうか」まで見ています。
もちろん、学生に選ばれるためだけに、すべての制度を導入する必要はありません。
大切なのは、自社でできる働き方を整理し、できないことも含めてきちんと伝えることです。
また、制度として決まっていなくても、社員の事情に応じて柔軟に対応している企業もあるでしょう。
そうした実態も、社内では当たり前になっていると採用時には伝え忘れがちです。
「地方企業だから働き方の選択肢が少ない」と学生に思われる前に、自社ではどのような働き方ができるのかを見えるようにする。
条件を大きく変えなくても、学生の不安を一つ減らすことはできます。
学生に響く魅力づくり:先輩社員・暮らし・キャリアの伝え方

Uターン就職を現実的な選択肢として考えてもらうには、学生が「ここで働く自分」を具体的に想像できる情報が欠かせません。
学生と話していると、会社説明会では「いい会社だと思った」と話していたのに、志望先として考える段階になると迷い始めることがあります。
「実際にどんな働き方になるんだろう」
「地元に戻ったあとの生活が想像できない」
「この会社に入って、数年後どうなっているんだろう」
会社の魅力は理解できても、自分の未来と結びついていなければ、入社を決めるところまでは進みにくいのです。
そこで伝えたいのが、先輩社員のリアルな姿です。
たとえば、入社3年目の社員について紹介するなら、所属部署や仕事内容だけで終わらせる必要はありません。
どのような仕事を任されるようになったのか。入社当初と比べて何ができるようになったのか。仕事で難しいと感じていることは何か。
こうした情報があると、学生は「自分が入社したら」と置き換えて考えやすくなります。
また、Uターン就職では、仕事と同じくらい暮らしも重要です。
通勤時間や休日の過ごし方、地元に戻って変わったことなど、社員の日常を見せるのも一つの方法でしょう。
企業側からすると、採用情報とは関係がないように思えるかもしれません。しかし学生にとっては、仕事と暮らしを合わせて考えて初めて、Uターン後の生活が現実味を帯びてきます。
キャリアについても、役職や年収だけを示す必要はありません。
「3年目にはこんな仕事に挑戦している」
「若手社員がこのプロジェクトを担当している」
といった実例のほうが、その企業でどのように成長できるのかが伝わります。
面談で学生の話を聞いていると、華やかなキャリアだけを求めているわけではないと感じます。「自分にもできそう」「ここなら成長していけそう」と思える未来が見えることも、企業を選ぶうえでの安心材料になります。
会社の魅力を一方的に説明するのではなく、そこで働く人の姿を通して伝える。
先輩社員の仕事、成長、そして日々の暮らしまで見せることで、「地元に戻る」だけだったUターン就職が、「この会社で働きたい」という選択に変わっていきます。
地方だからこそできる採用改善:つながりと体験設計

地方企業の採用では、「都市部の企業と比べて知名度がない」「採用にかけられる予算が限られている」といった悩みもあるでしょう。
しかし、都市部の企業と同じ方法で競う必要はありません。
学生と接していて感じるのは、情報をたくさん集めても、最後の決め手になるのは「実際に会ってどう感じたか」「自分が働く姿を想像できたか」という感覚であることです。
その点、人や地域との距離が近い地方企業には強みがあります。
採用担当者だけでなく、若手社員や経営者とも直接話せる。実際の職場を見られる。働く場所だけでなく、その地域での暮らしまで体験できる。
こうした接点をつくることで、Webサイトだけでは伝えきれない会社の空気が見えてきます。
情報を増やすだけでなく、学生自身に「感じてもらう機会」をつくる。
顔が見える採用は、Uターン就職に対する学生の不安を減らすだけでなく、地方企業ならではの魅力を伝える方法にもなります。
企業訪問の敷居を下げる
「会社に興味はあるけれど、応募するかはまだ分からない」
そんな段階で企業訪問を申し込むことに、ハードルを感じる学生もいます。
特にUターン就職では、学生が県外に住んでいるケースもあります。帰省のタイミングが合わなければ、企業を知る機会そのものを逃してしまうかもしれません。
だからこそ、「応募する人が来る場所」ではなく、「気になったら見に来られる場所」にすることが大切です。
たとえば、選考とは関係のない職場見学や、若手社員とのカジュアルな面談、帰省時に参加できる短時間の会社訪問などが考えられます。
実際の職場を見ることで、
「思っていたより若い人が多かった」
「社員同士が話しやすそうだった」
「この雰囲気なら働けるかもしれない」
と、企業に対する印象が変わることもあります。
面接官として学生を見てきた私自身も、説明を聞くだけでは分からなかったことが、社員との何気ない会話から伝わる場面を何度も見てきました。
きれいに作り込んだ採用イベントでなくても構いません。普段の職場を見てもらうこと自体が、学生にとって貴重な判断材料になります。
地域の大学との連携
Uターン採用では、学生が就活を本格的に始めてから接点をつくろうとしても、すでに都市部の企業を中心に見ていることがあります。
そこで考えたいのが、地域の大学との継続的な関係づくりです。
キャリアセンターへ求人情報を届けるだけでなく、授業へのゲスト登壇や地域イベントへの参加など、学生が企業を知る接点を少しずつ増やしていきます。
大切なのは、すぐに応募してもらうことだけを目的にしないことです。
学生にとって「知らない地方企業」と「以前から知っている地方企業」では、就職先として考えるときの心理的な距離が違います。
就活が始まる前から企業やそこで働く人の顔が見えていれば、「地元で働く」という選択肢も自然に考えやすくなります。
地方企業には、人と人とのつながりをつくりやすい環境があります。
都市部の企業と同じ情報量や知名度で競うのではなく、学生との接点を積み重ねながら、「この人たちと働いてみたい」と感じてもらう。
その関係づくりも、地方だからこそできる採用改善の一つです。
まとめ:地方企業が変われば、Uターン就職はもっと増える

Uターン就職が選ばれないと、「学生は都会で働きたいのだろう」と考えてしまうかもしれません。
しかし、学生と日々話していると、地方への拒否感より、「働く未来が見えない」という不安を感じているケースがあります。
自社では当たり前になっている魅力を言葉にする。若手社員の働く姿や地域での暮らしを伝える。学生と直接話せる接点をつくる。
こうした取り組みで学生の「分からない」を減らすことが、Uターン就職で選ばれる第一歩です。
私は面接官として20年間採用に携わり、現在は学生の就活支援と企業の採用支援をおこなっています。TikTokで学生の反応や価値観に触れるなかでも、企業が伝えたいことと、学生が知りたいことのズレを感じてきました。
株式会社まちづくり観光デザインセンターでは、学生側のリアルな感覚を踏まえながら、その会社らしい採用を一緒につくる伴走支援をおこなっています。
「自社の魅力が学生に伝わっているか分からない」「Uターン採用で何から変えればいいか迷っている」という企業様は、私と一緒に学生の目線から採用を見直してみませんか。
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